
この言葉は石川五右衛門が京都・南禅寺の山門の屋上から満開の桜を愛でた歌舞伎の口上ですが、これから紹介する場所からの眺めはまさに絶景、圧巻です。その場所とは、来見屋城(くるみやじょう:通称「城の天」:標高385m)跡から少し下った大岩です。眼下には吉田の地域が一望でき、東には、早月に向かう山並み、西には金屋、吉備そして湯浅の海や島々まで、南には上田山、鳥屋城山(標高305m)、さらに南の山々も見ることができます。ここからなら、兵士がどういう動きをしているかが分かるという絶好の場所でもあります。
さて、上田山(標高159m)の麓(ふもと)に「矢本」と呼ばれる地域があります。地名の由来については定かに分かっていません。想像を豊かにした話として、来見屋城から上田山の砦に向かって弓矢を打ちそれが上田山の麓に落ち、そこが矢本だと、まことしやかに話されることもあります。しかし、この間の距離はかなりのものです。源平合戦で扇を射抜いた那須与一、江戸時代に京都・三十三間堂で記録を打ち立てた紀州藩の和佐大八郎でさえ至難の業となる距離でしょう。
話題を変えて、この地方の上空からの地形図を見ると、伏羊川は立石方面から西に流れ伏羊地区を通り、篠坂池あたりで直角に北に向きを変え吉田地域内の早月谷川に合流しています。ところが、実はこの流れの向きはかつて(更新世:数百年前)、篠坂池あたりからさらに西に流れ、現在の福井会館、カネ岩醤油本店さんの近くで早月谷川に合流していたと考えられています。では、なぜ北に向きを変えることとなったのか。最初の写真や3つ目の写真をじっくり見ると、早月の山並みと上田山の間を南北に流れる伏羊川、そして篠坂池、さらに南の方にたどるとへこんでいるのが見えます。実はこの線に沿って断層があることが金屋町誌にも記載されています。
このことから、早月の山並みが上田山まで続いていたのが、断層によって切り崩され、小川福井までまっすぐ西に流れていた伏羊川は結果として、篠坂池あたりで北に向きを変え早月谷川へと流れ込むこととなったと推測されます。このように様々な要因によって河川の流路を変えて別の川に合流するという現象は「河川争奪」と呼ばれ、全国的にみられるということです。
ちなみに、断層は吉田周辺にはいくつもあります。その中でも「有田川構造線」(御荷鉾線)は、吉田北原の山麓を通って西には箕島、有田市方面へ、東には五名谷川を横切って青田、早月谷、さらに東へと走っています。
chikeichishitsugenkou.pdf (https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/032600/yasei/reddata_d/fil/chikeichishitsugenkou.pdf)4頁(678頁)
最初の写真で右手に見える鳥屋城山には、かつて鳥屋城というお城がありました。「定本 和歌山県の城」「日本城郭体系10」などによると、この城は湯浅宗重の孫宗基が築城し、この地が石垣荘にあったことから石垣城と呼ばれました。その後、南北朝が合一し畠山氏が入国。広城(広川町)を本城とし、岩室城(有田市宮原町)と石垣城は支城となり、その石垣城は外山(とや)城と改められ、さらに鳥屋城となりました。鳥屋城と来見屋城とは相対する位置にあり、敵同士が陣取っていたのでしょう。
鳥屋城山といえば、かつてからアンモナイトなど世界的にも重要な化石の産地になっていて、2006年(平成18年)にはほぼ全身骨格の新種のモササウルス類「メガプテリギウス・ワカヤマエンシス」(通称:ワカヤマソウリュウ)が発見されました。恐竜時代の海に生息した最大級の爬(は)虫類で、今回の化石は約6mありました。昨年(令和7年)から、県立自然博物館では復元骨格が、そしてアレックでは模型が展示されています。金屋中学校の空き教室などを利用してのクーリング作業や研究などの長い期間を経て世界的にも大変貴重な発見、新種であることが判明したものです。
あの大岩に立ち、かつて、鳥屋城山が海底にあり、深い海でワカヤマソウリュウや様々なアンモナイトなどが生きていた恐竜時代を思い浮かべると何ともロマンにあふれます。
なお、この大岩は山中にあり経路は整備されていません。行く場合は必ず案内人に同行してもらってください。
(補)
「君はスキノサウルス」(月刊少年マガジンKC 関口太郎)という漫画本(3巻)があります。(アレックにもあります)
https://www.amazon.co.jp/%E5%90%9B%E3%81%AF%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B9-1-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E6%9C%88%E5%88%8A%E3%83%9E%E3%82%AC%E3%82%B8%E3%83%B3-%E9%96%A2%E5%8F%A3-%E5%A4%AA%E9%83%8E/dp/4065281288
悩みを抱え東京から鳥屋城山近くの高校(金屋中学校がモデル)に転向してきた高校生が化石に夢中の女子高校生に出会う。そこから物語が展開していきますが、金屋中学校や金屋などのあちこちの景色が実に精細に描かれています。もちろん鳥屋城山の魅力も。機会があれば是非どうぞ。